兵器としてはマイナーな部類であり、かつ鉄道網を使った作戦が終わったら用済みになる柔軟性のない特殊兵器。残っているのは奇跡めいているのかもしれません。

このアングルから見ると、兵器というより大物車or架橋工事用操重車(ソ300等)に見えます。

主砲が見えると、兵器っぽく見えますね。

主砲付近アップ。重量感が凄い。

砲弾。ちょっと投げやりな感じの展示ですが参考にはなります。

全景。この車の詳細は分かりませんが、第二次大戦当時のものだと思います。

星マークの赤い車輪が愛国心を鼓舞してますね(苦笑)。
一部の車輪にだけロッドが掛かっていた跡があるのに注目。自走能力を持っていたってことでしょうか?
【追記】
詳細に関して、junqawai様より解説板の写真を頂きました。有難うございます。

口径305mm。最大飛距離30km。発射間隔2発/分。
1938年に3基製造。使われたのは1939-41年の間、対フインランドとの戦闘の模様。期待していた?ドイツの列車砲との射ち合いとはならなかったようです。というか線路幅違うんで直通できるのは軌間が同じフィンランド位ですね。
1991年までは射てる状態で保たれていたというのは本当でしょうか?

装甲車。ドイツにも似たようなのありますよね。
そして、締めはRT23ミサイルランチャー編成。
冷戦期の鉄道兵器としては最大・最強・最後のものでしょうか。広大な鉄道網を有するソ連ならではの、戦略ミサイル原潜の陸上版でしょうね。



こんな縦長の鉄道車両?ほかにありますまい!


全景! 手前に見えるのはアンテナではなく、架線押し上げ装置。
かつて我々西側を狙っていたミサイルであるにも関わらず、禍々しさは不思議と感じさせません。むしろ頭の中で鳴り響くはサンダーバードのテーマ。勿論JR西日本の電車じゃなくてイギリスの人形劇の方ですよ。「核の脅威、冷戦…」みたいなドキュメンタリーで流されるような、おどろおどろしい曲は似合いません、多分。
あと、帰国後お台場のガンダムも見に行ったんですが……。この移動式ミサイルランチャーみた後だと巷間で云われるほど感激感動できませんでした。どう考えてもガンダムが勝てる気がしません(笑)。
ええと……戦略兵器のICBMと戦術兵器のMS比較するのが所詮、無理ありすぎですね。
冷蔵車に偽装しているのも鉄道ファン的には美味しいところです。よくぞ押し込んだものと、そういう意味でも関心します。

偽装対象である冷蔵車(参考写真)。
……似てはいますけど、サイズが全然違うので遠目に見たら(=衛星等で見たら)一発でバレそうです。一応、トンネルなどに隠しておいたという話ではありますが。

ミサイルランチャー車のアウトリガー。車体を地面と固定します。
側面の怪しげなハッチ群にも注目です。

屋根の開き方が大胆。

連結部。客車同様のゴム幌で繋がれ貫通可能? 普通の冷蔵車ではケーブルが渡されているだけですから、ここも識別ポイント。

台車は複式4-4ボギー。流石にソ連と言えども、複式ボギーの超大型貨車は少数派です。冷蔵車では採用例は自分の知る限り、ないはず。だから遠目に見ても「複式ボギーの冷蔵車=ミサイルランチャー車」と分かってしまう……。
枕バネが4連なのも貨車用台車としては珍奇。

指令車。窓や開口部・可動部がなくて一番普通の冷蔵車に近い外見でしょうか……。でも足回りはミサイルランチャー車道用の複式ボギーですが。

電源車。ロシアの冷蔵車には必ず電源車がつきますが、ぜんぜん違う形です。やはり足回りは複式ボギー。

ミサイルランチャー車の解説。
1986年製造。全長23.6m。幅3.2m。高さ5m。重量200頓。
135トン積み8軸貨車をベースに設計された。屋根は油圧ギアにより開閉する。ミサイルは0.43メガトンの核弾頭を10個搭載する。
ミサイル飛距離10100km。ミサイル長23m。打ち上げキャニスタ長21m。ミサイル直径2.4m。ミサイル打上重量104.8頓。ミサイルと打ち上げキャニスタ長の総重量126頓。
……鉄道車両のスペックですよね、これ?
ミサイルの長さとミサイルランチャー車の長さが変わらないと云うことは、かなりの極限設計であることが推測できます。

電源車の解説。
1986年製造。全長23.6m。幅3.2m。高さ5m。
100KWのディーゼル発電機を4機搭載。また、架線の押し上げと短絡を行う装置も備える。
一節にはロシアの電化率は90%とか云われますので、この種の車の運用には架線が邪魔になります。非常事態だから架線は切ってしまうのかと思いきや、押し退け機を使うとは! まぁ架線痛んで再利用できないでしょうが、コレ発車、もとい発射するときにはそれどころじゃないでしょう。

指令車の解説。指令車というより、この移動ミサイル編成についての解説ですね。
鉄道趣味的な部分だけ要約すると……。
1987年〜1991年に12編成が製造された。
編成は以下の通りである。
「指令車+ミサイルランチャー車+電源車」のユニット3組
兵員輸送車7両
燃料+潤滑油タンク車(複数両?)
M62ディーゼル機関車 3重連
思ってた以上の長大編成で運用されていた吉。
ここに展示されてるユニットが3組……格好いいんですけど、胸焼けしそうです。3×12編成ですからこんなのが36ユニットも配備されてたんですね。
日本語版Wikipediaの解説はこちら。
2005年までに退役してるとのことです。というか数年前まで現役だったのに街中に堂々と展示しちゃう大胆さに感服しちゃいます。……禍々しさを感じさせないのはこの堂々としたところにあるかもしれません。
ロシア語版解説はこちら。
日本語版にはない記述多し。Googleで訳して読む価値充分です。そしてリンク先の記事にも写真豊富。
http://www.popmech.ru/article/4801-nedobryiy-molodets/
指令車の車内写真もあり! ブラウン管テレビのおかれた食堂と厨房を見ると不思議と和みます。
http://www.rusarmy.com/forum/topic2039.html
博物館についたばかりの、屋根を閉じた写真あり。
動画。
http://www.youtube.com/watch?v=uRwsDxFC1P8
「History of Russian Rail Forces #2 Cannons @ missiles」
稼動状態が写っているんですが編集が悪くて肝心のシーンが見えにくいのが難。

指令車側から編成を振り返る。左の機関車はおなじみM62。

兵器関連の展示はこんな感じです。
鉄道ファンだけではなく、軍事ファンの訪問もおすすめですよ?

最後に振り返って一枚。
頭端式ホームの行き先表示機が、ここが10年ほど前まではワルシャワ駅であったことを思い出させます。
左手にちらりと見えるのは留置車両。先にも触れましたが本線とつながっている理想的な鉄道博物館の一つでもある由。
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これ見るだけであっても現地に行く価値がありそうです。
何よりその長編成に驚きです。あまりその車両が活躍する世界は望みませんが、それでも動いてる姿が見たいとも思ってしまいますね
ついに出ましたね。マニアな目で見れば無理はありますが、うまく冷蔵車に偽装出来ていると思います。活躍する事が無くて本当に良かったです。飛距離10000kmのミサイル発射台にしては、こんなんで大丈夫なのかなと思うほど華奢なアウトリガーですね。
ちょっと写っているお馴染みの緑のM62の写真は撮られましたか? おそらくM62-1724から1877の間かと思うのですが、これの正式な形式はДМ62(DM62)、こういったミサイル列車などに使用されるM62の軍用バージョンです。指令車との通信設備の他、ガスマスクに接続する新鮮な空気の供給設備などがあったとか。
お久しぶりです。
>これ見るだけであっても現地に行く価値がありそうです。
大ありですよ!
私も半分くらいはこの大物目当てでした(苦笑)。
活躍しちゃう世界はちょっとイヤですけど、動いてる姿を見たいというのは同感です。(過度にカットバック編集されてない)まともな動画どっかにないかなぁ。
修正でお手数おかけしました。
偽装は素人目には何とかなってますね。昔の新幹線がロボットに変形するおもちゃ(なんか数社から出ててような)をガチでやってる感じがこの車両の面白いところというか魅力というか。
>飛距離10000kmのミサイル発射台にしては、こんなんで大丈夫なのかなと思うほど華奢なアウトリガーですね。
ツッコミが鋭いですね。確かに云われてみると「?」な部分ではあります。あと、今でこそワイヤーで張られているので安定して自立してますけど、20ンmもある「塔」がたった1520mmのレールの上に載っているというのは発射しなくても不安定のような……。
アウトリガに関しては、操重車の類と違って過重負担が真下にしかこないからアレでも大丈夫なのかもしれません。ただ安全性には問題が残りそう(打上中にコケたら自軍に壊滅的被害……)。
比較の意味で道路輸送タイプのミサイルランチャー全般も調べてみる必要がありそうです。
ДМ62(DM62)は撮るの忘れてました……。ただのM62だと思ってましたので。外見はともかく、中身が凄いですね。空気マスクはABC兵器対策? シャレになってない装備です。
また遊びに来ます!!