2010年03月12日

【米:第6日目の1 2009/0929】ハイアワッサ篇……じゃなくてエンパイア・ビルダー篇7:St Paul駅で出会った、憧れのスカイトップにスーパードーム!

 座席連泊4泊目をすごし、目覚めて身支度して7時くらい。
 7時過ぎに停車したSt Paul駅は45分の長時間停車。「鉄的に何かあれば良いな……」とは思っておりました。何か、というのは貨車とか留置のディーゼル機関車とか、保存蒸機とかその程度の話です。

 しかし、入線時に何か「とてつもなく特徴ある形状」のオレンジ色の客車が見えたのです! ひょっとして……?

 
 未だまだ空の色は重い。降りて「一服」の人たちも多数。


 編成後部を眺める。左方に見える、あの姿は?

 とても有り難いことに、接近・撮影も容易そうな雰囲気! 


 !!!


 !!!!!!
 ミルウォーキー鉄道の「ハイアワッサ」に使われたスカイトップ展望車に、スーパードーム! 
 アメリカでは古い展望車・ドームカーの多くが観光会社の私有車として用いられて結構な数が「現役」であるとは聞いていました。またロスアンゼルスでもそうした古典展望車を既に見ています。

 しかし、スカイトップという大物に逢えたとは……。
 傾斜・後退角・流麗さにおいて隙のない流線型。そして屋根にいたるまで2段に窓ガラスを並べた、他に喩えようのない孤高の形状。SF的といっても良い。

 「写真で楽しむ世界の鉄道 アメリカ2(1962 交友社)」で見た時のインパクトは相当なものでした。
 それが今、目の前に留置されている。さぁ撮ってと言わんばかりに!


 列車「ハイアワッサ」については、以下参照願います。http://en.wikipedia.org/wiki/Hiawatha_(passenger_train)

 ミルウォーキー鉄道では幾つかの列車に「ハイアワッサ」の愛称を使っていましたが、特に有名だったのはシカゴ〜シアトル〜タコマ間の大陸横断の長距離列車(3525km/所要48時間)「オリンピアン・ハイアワッサ」。運行区間的にはまさにグレートノーザン鉄道の「エンパイア・ビルダー」のライバル。
 ロッキー山脈、カスケード山脈越えの電化区間も走行したりと特徴的な列車でしたが、1961年に廃止。幸いにもスカイトップ展望車とスーパードームはCN(カナダ国鉄)に売却、「スーパーコンチネンタル」で再起します(1970年代なかばに引退)。
 もう一つ有名だったのはシカゴ〜ミネアポリス間の昼行列車(680km/所要7〜8時間)としての「モーニング・ハイアワッサ」「アフタヌーン・ハイアワッサ」2往復。こちらは1971年の旅客営業撤退まで残りました。

 ちなみに後者、昼行列車の「ハイアワッサ」も「エンパイア・ビルダー」とは無関係ではありません。
 アムトラック成立後の「エンパイア・ビルダー」は、St Paul(ミネアポリス)からシカゴまでの区間をバーリントン鉄道経由からミルウォーキー鉄道経由に改め、「(ミネアポリス発シカゴ行き)モーニング・ハイアワッサ」「(シカゴ発ミネアポリス行)アフタヌーン・ハイアワッサ」のスジをなぞって運行している由。
 本数は半減し、かつてのライバルに統合されてしまったものの、列車としての「ハイアワッサ」は今も生き続けていると。

 また、1989年から「ハイアワッサ」の名称は、アムトラックの「Hiawatha Service」というシカゴ〜ミルウォーキー間(138km/所要1時間半)の短距離列車で復活しています。
 格落ち感は否めませんが、1日7往復体制でそこそこ盛況の模様。
http://en.wikipedia.org/wiki/Hiawatha_(Amtrak)




 「ハイアワッサ」の客車については以下を参照願います。(写真・形式図などもあり。車歴も辿れます!)
http://www.trainweb.org/hiawatha/passenger.html

 「Skytop Lounges」は1947-48年(昭和22年!)に、寝台展望車として6両、パーラー展望車として4両が製造。前者はオリンピアン・ハイアワッサ、後者はモーニング/アフタヌーン・ハイアワッサに使われた由。
 前者は列車廃止に伴いCNに売却。後者はアムトラックの車籍は貰えず、3両が売却、1両が解体(火災が原因)されてしまいました。
 現在、寝台展望車の方は3両が1977-78年に解体されたものの、2両が静態保存、1両がレストア中。
 パーラー展望車は1両が早期に解体済。1両が保管中。1両が静態保存。残る1両は「現役」。

 こちらも参照。
http://www.trainweb.org/web_lurker/MILWf/

 「Super Domes」は1952年に10両製造。やはり6両がオリンピアン・ハイアワッサ、4両がモーニング/アフタヌーン・ハイアワッサに使われました。前者6両はCNに売却。後者4両はアムトラックの車籍を得ましたが長くは使われず、早々に売却されてしまいました。
 その後、CN組も引退、売却……売れなかった1両が早期に解体された他は、アムトラック組ともどもが纏めてアラスカに集った時期もあった模様。しかし、21世紀に入ってからはアラスカからも引退……それでも更に売却され、2010年現在も保存鉄道や私有車両として7両が現役とか。
(残る1両は保管中、1両は放置の末に解体されてしまいましたが、それでも驚くべき残存率! ドームカーの「商品価値」が伺えます)

http://www.trainweb.org/web_lurker/MILWf/
 こちらも参照。




 旧186号「Cedar Rapids」。10両製造されたスカイトップ展望車の中で、レール上で「現役」なのはこの1両のみ。昼行用で車内は1−1配置の「パーラーカー」スタイル。
 
 車歴。
http://www.trainweb.org/hiawatha/cedar.html
 1970年の引退後、なんと1985年まで保管されていました。売却を何度か経て1999年に観光会社"Friends of the 261"の所有になり、今に至ります。
http://www.261.com

 車内写真はこちら。
http://www.trainweb.org/hiawatha/skytop5.jpg
 昔の写真と思われますが、今も大きく改装はされていないはず?

 形式図はこちらより。
http://www.trainweb.org/hiawatha/rapidsd.jpg
 24名のパーラーシートと、5名の個室(デイ・ドローイングルーム)、そして展望席。


 強烈な面構え。テールライトが真ん中に1つ、という配置はインパクトがあります。そのうえ、このライトは追突事故防止のため、停車中・低速走行中は点滅したとか。
 左のジャンパ栓は電源供給用?の様で、地上のポストに繋がっていました。


 左がスカイトップ。右がスーパードーム。
 ドア窓やトイレ窓が丸いのも、この客車ではもはや印象に残らないレベル……。


 切り抜きのエンブレム。
 ハイアワッサの由来はモーホーク族の長の名より。

 800040というのはアムトラックで「私有客車」に付けた番号です。


 旧53号。
 カナダ国鉄(CN)に売却後、1978年にVIAに移管。1982年に引退。
 その後は観光会社や鉄道博物館の売却を繰り返し、2005年に観光会社"Friends of the 261"の所有になり、スカイトップ展望車とお揃いになりました。
 なお、その間の2001年にドームの窓の一部を「非常窓」に改造しています(ドアの全くない車両であるため、安全面で要求された)。

 車歴。
http://www.trainweb.org/hiawatha/53.html

 形式図(原型)。
http://www.trainweb.org/hiawatha/domed.jpg
 1階は軽食堂、2階は全て前向き座席になっていました。CN時代に2階の一部をラウンジタイプのソファーに変更したという話もあるのですが、現在のこの車はどうなっているのやら?


 スーパードーム車の台車。重厚な3軸ボギー。
 車体全長にドームのあるフルドーム客車はグレートノーザン鉄道・ミルウォーキー鉄道・サンタフェ鉄道・サザンパシフィック鉄道の4社が導入しましたが、全て3軸ボギー台車付きでした。
 

 スーパードームの隣は重厚なヘビィーウェイトの展望車。


 調べてみましたが、GNW&Bが所有する"Gritty Palace"ということしか分かりませんでした。
(所有者が観光会社なのか、何らかの団体か、或いは個人か? 「プライベートカー」の定義も難しいものです)


 台車。一見軸バネ式に見えますが、よくみると内側にイコライザーが見えます。ちょっと不思議な台車です。

 その隣が、不思議な形状をした展望車。
 スムーズサイドの近代的形状に、オープンデッキというアンバランス。


 よく見ると、室内灯も点っています。これから何処かに出発するところなのか、或いは一夜をこの駅で明かしたところなのか……???

 所有者(社)のホームページ見つけました。内部写真もあります。
http://www.highirontravel.com/caritas2.htm
 アンバランスな形状は、通常の寝台車を展望車に改造したため。

 この車は個人でも借りられる様です。1日4500-6000ドル、留置時は1日1000ドル。料金は運賃・食事など全て込み。ちなみに定員8名。8人で乗れば意外とリーズナブル? 或いは一生の記念になるような旅に使うこと考えれば……手が出ない値段ではない??

 アムトラックの列車に連結するほか(原則として最後尾に連結!)、カナダのVIAやメキシコへの直通もアレンジできます、と。
 あと、用途のひとつに「有権者を惹きつける、選挙キャンペーンに」というのもアメリカらしい。


 それにしても、これらの希少な?車をみて大喜びしている「エンパイア・ビルダー」の乗客はどうやら自分だけのようで、タバコ吸いに降りた人たちも殆ど無関心でした。


 St paul駅舎。実用本位。


 座席/荷物合造車(1階が荷物室)からの荷扱い。


 たぶん朝食準備中の食堂車。資材を積み込んで、そしてゴミを出して。


 先の夢のような車両を見た後で、現実に引き戻すスーパーライナー(笑)。良い車なんですけどね、でも相手が悪すぎですよ……。


 お馴染みのカヴァードホッパ車。個体差とかヴァリエーションは相当にある模様。


 3両並んでれば、どこか微妙に違うかたちをしています。
 

 出発前に斜め上から名残の1枚。目線はスーパーライナーの2階席。


 Pt paul出発直前。ラウンジ車は何故かガラガラ。写真撮りやすくて助かります……。
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posted by 西方快車 at 19:20| Comment(0) | 2009 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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