2010年03月30日

【米:第7日目の1 2009/0930】キャピトル・リミテッド篇2:列車の概要とか。改装されたラウンジ風食堂車。東部唯一の「ドームカー」の名残。

 「キャピトル・リミテッド」シカゴ〜ワシントンDC間は所要17時間程度で1泊2日。距離にして1222km。
 ちなみに「北斗星/カシオペア」は上野〜札幌間を所要約16時間で1214kmですから、かなり類似する存在でしょうか。まぁなんども繰り返し書くように、アムトラックは座席車付きで深夜停車も多いので「八甲田/はまなす」+「北斗星」と言ったほうが喩えとしては正確ですが。
 日本で「北斗星」乗るのはさぁ長旅だ……という感じがするものですけど、既に「エンパイア・ビルダー」の2泊3日こなした後だと「たいした距離じゃないや」と感覚が麻痺するのはなんとも(笑)。

 なんであれ、夜行列車としてはそこそこ「体験」しやすい距離・時間だと思います。車両がスーパーライナーで食堂・ラウンジ揃ってますから大陸横断の超長距離同様の車両・設備というのも好ポイント。

 さて、ちょっと歴史的な話を。
 今は1往復の「鉄道首都」と「連邦首都」を結ぶ列車というのは昔はもっともっと本数あったはず。
 1960年代なら、ペンシルバニア鉄道(PRR)の「ブロードウェイ・リミテッド」、ボルティモア&オハイオ鉄道(B&O)の「コロンビアン」「キャピトル・リミテッド」「ワシントン・シカゴエクスプレス」が有名なところ。寝台車のみ・或いは寝台車主体の特別な列車だけでこの状態でした……。

 しかし、1971年の「公営化」を乗り越えられたのは「ブロードウェイ・リミテッド」のみ(他にあったら何方かご教示を!)。この著名な列車も1995年に廃止されてしまいました(但しワシントンDC編成はもっと早い時期に廃止されてた模様。少なくとも1987年まではDC編成とNY編成が混成でしたが)。
 
 今の「キャピトル・リミテッド」は1981年に旧B&Oルート経由の列車が復活したものです。「復活」の理由が調べてもわからないのですが……。ブロードウェイ・リミテッド(ワシントンDC編成)廃止の代替という感じでも無いですし。
 ちなみにB&Oは、1963年には既にチェサピーク・アンド・オハイオ鉄道(C&O)に吸収され、1971年に旅客輸送全面廃止。1986年にはCSXトランスポーテーションとなり会社が消滅してしまいました。

 話を「キャピトル・リミテッド」に戻せば、1960年代には東部の鉄道では珍しいドームカーを付けていました。シカゴ以西と違って車両限界がシビアな(勿論、欧州に比べりゃそれでも大きい)東部の鉄道でこの種の車を導入したのはB&Oの2両とC&Oの6両のみです。何れも屋根の低い特製のドームカーでした。

http://www.trainweb.org/web_lurker/BO/
 B&Oのドームカー(ドーム・コーチ)。形式図へのリンクあり。
http://en.wikipedia.org/wiki/Capitol_Limited_(B%26O_train)
 Capitol_Limited(wikipedia)。ドームカー車内写真やら食堂車メニューやら貴重な資料多し!

 今のB&Oルートは車両限界が西部並となり、ダブルスタックカーにスーパーライナー編成の運用も可能になっています。現「キャピトル・リミテッド」のスーパーライナーラウンジはB&Oドームカーの名残なのかもしれません。

 取り敢えず、現状の編成は以下の通り。

←ワシントンDC                     →シカゴ
機関車−機関車−荷物車−従業員寝台−寝台−寝台−食堂−ラウンジ−座席−座席

 8両編成中、運賃収入のある車は僅か4両という優雅さというか、大味っぷり! 日本の「民営事業」だったら間違いなく廃止されてるでしょうね……。
 
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 深夜にクリーブランド、ピッツバーグというそこそこの大都市に停車しているはず。結構客の入れ替わりもあったような気がします。

 でも目が覚めて気がついたのは7:09発のConnellsville駅。

 小さな待合室のみの無人駅。


 最後尾より眺める。
 さて、ここらから川……渓流沿いとなり、景色が良くなってきます!

 身支度してラウンジ車へ。
 雨の展望車というのも案外趣のあるものです。天窓流れる水滴が迫力。
 先に「エンパイア・ビルダー」でやたら乾いた眺めを目にした後だけに「湿り」に飢えていたのかも。


 流石に空いています。時間が経つに連れ、だんだんソファもうまってきましたが……。

 8時前に隣の食堂車を覗き、朝食予約出来るか尋ねたところ、空いてるのですぐ!とのこと。
 この食堂車が近年に大改装したのか、面白い車でした。


 車端から中央を見たところ。中央部にカウンターあり。


 中央から車端をみたところ。コの字ソファーとテーブル席が交互配置。
 この列車ではラウンジ車1階の売店があるので使っていませんでしたが、売店の機能もあり、その気になれば食堂とラウンジ車を1両で済ませてしまえそうです。


 食堂として営業に供しているのは残りの2/3のセクションのみ。こちらもテーブル席とソファ席の交互配置。 食堂車を何度も何度も利用する長旅だと、こんな車に当たるのは気分が変わって嬉しいものです。まぁメニューは相変わらずの全土共通のものですが。

 通されたのは幸いにも?ソファ席の方でした。相席の方は寝台車から。座席車客の食堂車利用率はあんまり高くなさそうです(価格は高くないのに)。相席者との話題は「ロスアンゼルスからシアトル通って乗り通してきた」で済んでしまいます(笑)。普通のアメリカ人はやらない乗車パターンですから。


 「お馴染み」のスクランブルエッグとビスケット、ジュースとコーヒーで6ドル。
 食器はプラ製使い捨てですが、テーブルクロスは布製。

 サービスよく、コーヒー何杯かお代わりもらって渓流添いの優しい景色眺めつつ、やはり食事……特に朝食は楽しみの一つでした。


 食後は座席に戻らず、ラウンジに居座ってしまいました。
 朝食とりながら眺めたのもこんな景色。


 前方を眺める。こんな区間をまったりゆっくりと。癒し系。


 貨物列車の追い抜き。巨大な自動車輸送車。


 オーバークロスする謎の廃線?


 派手派手なベイウィンドウカブース(保線用)。


 山間の風情ある街並みを眺めつつ。


 ラウンジ車もそこそこ賑わってきました。



 見事な紅葉!


 渓流が真下に迫る……。迫力とは違いますが、日本の鉄道景色でここまで自然への距離が近いところがあったかどうか考え込んでしまいました。
 とか書いてたらなんとなく叡電思い出しました。デオ900「きらら」の窓配置とか座席配置、あと特別料金不要なのに設備が太っ腹なのもどこか共通してます(笑)。(注:アムトラックには急行料金・特急料金の概念は無い! 長距離旅客輸送とサバーバンを比較する無茶は承知ですので念のため)


 山の中を行く。
 
 「キャピトル・リミテッド」の日本での紹介のされ方というと、シカゴとワシントンDC結ぶビジネスライクな路線・列車に過ぎない、景色は期待するな……という感じのものが多いような気がします。
 思いっきり異を唱えたいですね!! そりゃ確かにアメリカといってイメージされるようなワイルドな眺めはありませんが、そのかわりに優しい景色が間近に迫る別の魅力があるのですから。

 このルートに、かつて「東部ではほぼ唯一」のドームカーが運用されていた意味は大きいと。景色が売り物になるからこその「展望車」だったのですし。
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posted by 西方快車 at 22:08| Comment(0) | 2009 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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