2010年04月02日

【米:第7日目の3 2009/0930】キャピトル・リミテッド篇4:通勤鉄道MARCについて/なかなか魅力的なHARPERS FERRYの町とか駅舎とかトンネルとか。

 アメリカの鉄道は殆どが「石勝線(※)」である、という言い方は乱暴でしょうか?
 「普通列車」がほぼ存在せず、急行・特急に相当する中距離・長距離・超長距離列車のみが存在し、異様に長い駅間を結んで行く、と。
 で、その立派な列車は各駅に停車、急行料金・特急料金の概念もほぼ消滅していると。

※:1980年の開通当初から全列車が優等列車。区間利用で特急料金免除の特例ありの特殊線区。但し、1〜2時間ごとに特急の走る石勝線を、1日1本当たり前のアムトラックに例えるのは無茶かもしれませんが。

 例外は都市近郊(と北東回廊)。LAのメトロリンク、SFのカルトレイン、シカゴのメトラなどの通勤列車は「普通列車・普通電車」に該当しますから。問題はそのサービスエリアがどれほど遠くまで達しているかということでしょう。
 ワシントンDCにもマーク(MARC)という通勤鉄道があり、
http://mta.maryland.gov/services/marc/
「キャピトル・リミテッド」の走るCSX線(旧B&O)線にも通勤列車の運転があります。ワシントンDCからMARTINSBURGまでの約120km(東海道線なら東京〜三島)を2時間かけて! ちなみに「キャピトル・リミテッド」でもこの区間には1時間40分も掛かっています。

 問題は本数とダイヤ。

 時刻表を見ますと、MARTINSBURG発は朝5:25と6:30。ワシントンDC発MARTINSBURG行は夕16:55・17:40・19:15の僅か2.5往復!(本数が上下あわないのは回送か、併結か?) 早朝に郊外を出て、夕方に戻ってくる便のみ。
 そして、土日は運休です。

 まぁアメリカで2時間かけて郊外から鉄道通勤というのは相当に特殊なケースなんだろうなぁと推測は付きますし、そのために列車走らせているだけでも「奉仕」という意味でのサービスなんだろうなぁとも。ただ、物珍しさで乗る分にはちょっとばかり敷居が高いです(笑)。
 ちなみに運賃は片道10ドル丁度。JR(本州の幹線)で2200円の距離ですから激安ではありますが。
 

 そんなわけで、一応は「通勤圏」のMARTINSBURGに近づきました。

 1866年築という、歴史ある円形機関庫。扇形では無く円形、真ん中にターンテーブルがあった? 機関車はいわゆる4-4-0じゃないと格納不可でしょうね。

 駅舎は撮り逃してしまいました。
 

 MARTINSBURG〜HARPERS FERRY間の眺め。ポトマック川沿い。
 まぁ中央本線なら大月よりもずっと先に相当するところですからね。


 次のHARPERS FERRYまでは僅か25分。駅前の要素、この辺りは大変に趣ある集落。観光客も多そうでした。駐車場は広々。通勤客のライド&パークと週末の観光客用を兼ねているのでしょう。


 古い荷物車が再利用されています。集落へは階段が近道?


 駅舎は木造で、1894年築! 塔屋は2006年に復元されたもの。
 綺麗な駅なのですが無人駅。そして列車はアムトラックも含めて3.5往復のみ。週末にワシントンDCからの観光に便利なダイヤも組めば利用も望めそうなものですが……。
(キャピトル・リミテッドのダイヤもワシントンDC16:05発でここには17:16着。ワシントンDCへの帰りは11:30発……。鉄道での日帰りは一寸無理。ただ、HARPERS FERRYには幾つか宿泊施設もあるようなので「泊まりがけ」なら悪くないのかも)

 調べてみるとここは南北戦争の激戦地で有名な場所でもあるんですね。
 今は穏やかな町ですが……。


 駅舎に面していない「2番線」側の待合室。かなり傾いでますが……大丈夫?


 最後尾より駅舎の全景を収めることが出来ました。


 すぐにポトマック川を渡る


 左手には合流してくる別の線が!


 合流! 左手の路線はレールの光り方からして「支線」「専用線」の類、ましてや「廃線」「旧線」でないのは自明。地図で追ってみると……ずっと先でどこかの本線系に繋がっているようです。


 トンネル内で合流。おかげで不思議な形状のトンネルポータルになっています。

http://en.wikipedia.org/wiki/File:Columbian_(B%26O)_train.jpg
 お勧め、1949年にこの地点で撮影されたB&Oの列車「コロンビアン」の写真。トンネルポータルは外から見る分には普通の形状ですね。

 
 このトンネル内で合流(分岐)します。渡り線はないのでこの辺は複線ではなく双単線として機能しているはず……。

 最後にもう一枚お勧め。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Harper%27s_Ferry_seen_from_Maryland_side_of_Potomac_River.jpg
 HARPERS FERRYの俯瞰写真。鉄道の分岐が良くわかります。駅前の「荷物車」も線路が繋がっていたのかと推測出来る地形です。
posted by 西方快車 at 19:12| Comment(2) | 2009 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月01日

【米:第7日目の2 2009/0930】キャピトル・リミテッド篇3:アメリカ貨車あれこれ

 景色とか風情のある路線ではあるのですが、突っ込み入れるとしたら首都と経済首都?結ぶ幹線がこの程度……というツッコミも入れられるワケです。日本で云えば東海道本線にあたるラインなのに……。
 シカゴ〜DC/NYって鉄道全盛期(1930年代)に電化しようとは考えなかったのでしょうか?


 2時間ぶりの停車駅、CUMBERLAND駅。
 街並みは風情のある街なのですが、駅はショボいコンクリ駅舎。日本の国鉄時代っぽい無機的なところが逆に味があるというか無いというか。ちなみに無人。


 10分ほど停車するので外へ。雨は上がっていました。


 発車時に最後尾より。


 ここらの「大家」CSXの貨物列車。


 ひたすら車運車が続く編成。車運車を「有蓋」にするのは積荷保護の観点で有益。ちなみに日本のク5000での輸送はシートを積荷1台ごとにかけていたのでその作業とシート管理が大変だったとか。
 TTXは貨車リース会社。


 1999年に解体されたコンレールの表示が残る貨車。
 コンレール(Consolidated Rail Corporation)は1974年に経営破綻した幾つかの鉄道会社を「国有化(公社化)」したもので、強引に意訳すれば「アメリカ国鉄(貨物・インフラ部門)」。万年赤字のアムトラックと違い、こちらは黒字化に成功し、再民営化された由。


 最後尾。このタイプの貨車には3段積みと2段積みがありますが、これは2段積みタイプのみの編成(端から自走で積みこむので、2段と3段の混成はできない)。
 

 暫く山の中を走ると、今度は信号場?へ。


 うねうねと、長大に。
 日本では見慣れぬコイル・カーの車列。用途は鉄鋼コイル輸送用で、日本の過去形式だとトキ1000トキ21500トキ23900ワキ9000辺りの仲間。ただ日本や欧州の類似車が開閉屋根なのに対し、アメリカでは屋根をクレーンで外して荷役するようです。


 重量物運ぶゆえに台枠が頑丈そうなのも印象的。
 

 信号場かと思ったらちょっとした操車場でした。停泊する貨物列車は4重連。
 右手に見えるコンレール表記の残る有蓋車は背高の特殊車? 妻面を白く塗ってあるのは背高車を識別するため?


 おそらくは事業用のカブースと、お馴染みカバードホッパー車。手前のゴンドラ・カー(無蓋車)は相当に酷使されてますが現役なのか旧車なのか? また、無蓋車と云ってもカーダンパー荷役を前提としているのか側面は固定でアオリ戸にはなっていないようです。


 操車場の片隅の駅舎? かつて旅客扱いもあったのでしょうか?

posted by 西方快車 at 19:30| Comment(0) | 2009 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月30日

【米:第7日目の1 2009/0930】キャピトル・リミテッド篇2:列車の概要とか。改装されたラウンジ風食堂車。東部唯一の「ドームカー」の名残。

 「キャピトル・リミテッド」シカゴ〜ワシントンDC間は所要17時間程度で1泊2日。距離にして1222km。
 ちなみに「北斗星/カシオペア」は上野〜札幌間を所要約16時間で1214kmですから、かなり類似する存在でしょうか。まぁなんども繰り返し書くように、アムトラックは座席車付きで深夜停車も多いので「八甲田/はまなす」+「北斗星」と言ったほうが喩えとしては正確ですが。
 日本で「北斗星」乗るのはさぁ長旅だ……という感じがするものですけど、既に「エンパイア・ビルダー」の2泊3日こなした後だと「たいした距離じゃないや」と感覚が麻痺するのはなんとも(笑)。

 なんであれ、夜行列車としてはそこそこ「体験」しやすい距離・時間だと思います。車両がスーパーライナーで食堂・ラウンジ揃ってますから大陸横断の超長距離同様の車両・設備というのも好ポイント。

 さて、ちょっと歴史的な話を。
 今は1往復の「鉄道首都」と「連邦首都」を結ぶ列車というのは昔はもっともっと本数あったはず。
 1960年代なら、ペンシルバニア鉄道(PRR)の「ブロードウェイ・リミテッド」、ボルティモア&オハイオ鉄道(B&O)の「コロンビアン」「キャピトル・リミテッド」「ワシントン・シカゴエクスプレス」が有名なところ。寝台車のみ・或いは寝台車主体の特別な列車だけでこの状態でした……。

 しかし、1971年の「公営化」を乗り越えられたのは「ブロードウェイ・リミテッド」のみ(他にあったら何方かご教示を!)。この著名な列車も1995年に廃止されてしまいました(但しワシントンDC編成はもっと早い時期に廃止されてた模様。少なくとも1987年まではDC編成とNY編成が混成でしたが)。
 
 今の「キャピトル・リミテッド」は1981年に旧B&Oルート経由の列車が復活したものです。「復活」の理由が調べてもわからないのですが……。ブロードウェイ・リミテッド(ワシントンDC編成)廃止の代替という感じでも無いですし。
 ちなみにB&Oは、1963年には既にチェサピーク・アンド・オハイオ鉄道(C&O)に吸収され、1971年に旅客輸送全面廃止。1986年にはCSXトランスポーテーションとなり会社が消滅してしまいました。

 話を「キャピトル・リミテッド」に戻せば、1960年代には東部の鉄道では珍しいドームカーを付けていました。シカゴ以西と違って車両限界がシビアな(勿論、欧州に比べりゃそれでも大きい)東部の鉄道でこの種の車を導入したのはB&Oの2両とC&Oの6両のみです。何れも屋根の低い特製のドームカーでした。

http://www.trainweb.org/web_lurker/BO/
 B&Oのドームカー(ドーム・コーチ)。形式図へのリンクあり。
http://en.wikipedia.org/wiki/Capitol_Limited_(B%26O_train)
 Capitol_Limited(wikipedia)。ドームカー車内写真やら食堂車メニューやら貴重な資料多し!

 今のB&Oルートは車両限界が西部並となり、ダブルスタックカーにスーパーライナー編成の運用も可能になっています。現「キャピトル・リミテッド」のスーパーライナーラウンジはB&Oドームカーの名残なのかもしれません。

 取り敢えず、現状の編成は以下の通り。

←ワシントンDC                     →シカゴ
機関車−機関車−荷物車−従業員寝台−寝台−寝台−食堂−ラウンジ−座席−座席

 8両編成中、運賃収入のある車は僅か4両という優雅さというか、大味っぷり! 日本の「民営事業」だったら間違いなく廃止されてるでしょうね……。
 
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 深夜にクリーブランド、ピッツバーグというそこそこの大都市に停車しているはず。結構客の入れ替わりもあったような気がします。

 でも目が覚めて気がついたのは7:09発のConnellsville駅。

 小さな待合室のみの無人駅。


 最後尾より眺める。
 さて、ここらから川……渓流沿いとなり、景色が良くなってきます!

 身支度してラウンジ車へ。
 雨の展望車というのも案外趣のあるものです。天窓流れる水滴が迫力。
 先に「エンパイア・ビルダー」でやたら乾いた眺めを目にした後だけに「湿り」に飢えていたのかも。


 流石に空いています。時間が経つに連れ、だんだんソファもうまってきましたが……。

 8時前に隣の食堂車を覗き、朝食予約出来るか尋ねたところ、空いてるのですぐ!とのこと。
 この食堂車が近年に大改装したのか、面白い車でした。


 車端から中央を見たところ。中央部にカウンターあり。


 中央から車端をみたところ。コの字ソファーとテーブル席が交互配置。
 この列車ではラウンジ車1階の売店があるので使っていませんでしたが、売店の機能もあり、その気になれば食堂とラウンジ車を1両で済ませてしまえそうです。


 食堂として営業に供しているのは残りの2/3のセクションのみ。こちらもテーブル席とソファ席の交互配置。 食堂車を何度も何度も利用する長旅だと、こんな車に当たるのは気分が変わって嬉しいものです。まぁメニューは相変わらずの全土共通のものですが。

 通されたのは幸いにも?ソファ席の方でした。相席の方は寝台車から。座席車客の食堂車利用率はあんまり高くなさそうです(価格は高くないのに)。相席者との話題は「ロスアンゼルスからシアトル通って乗り通してきた」で済んでしまいます(笑)。普通のアメリカ人はやらない乗車パターンですから。


 「お馴染み」のスクランブルエッグとビスケット、ジュースとコーヒーで6ドル。
 食器はプラ製使い捨てですが、テーブルクロスは布製。

 サービスよく、コーヒー何杯かお代わりもらって渓流添いの優しい景色眺めつつ、やはり食事……特に朝食は楽しみの一つでした。


 食後は座席に戻らず、ラウンジに居座ってしまいました。
 朝食とりながら眺めたのもこんな景色。


 前方を眺める。こんな区間をまったりゆっくりと。癒し系。


 貨物列車の追い抜き。巨大な自動車輸送車。


 オーバークロスする謎の廃線?


 派手派手なベイウィンドウカブース(保線用)。


 山間の風情ある街並みを眺めつつ。


 ラウンジ車もそこそこ賑わってきました。



 見事な紅葉!


 渓流が真下に迫る……。迫力とは違いますが、日本の鉄道景色でここまで自然への距離が近いところがあったかどうか考え込んでしまいました。
 とか書いてたらなんとなく叡電思い出しました。デオ900「きらら」の窓配置とか座席配置、あと特別料金不要なのに設備が太っ腹なのもどこか共通してます(笑)。(注:アムトラックには急行料金・特急料金の概念は無い! 長距離旅客輸送とサバーバンを比較する無茶は承知ですので念のため)


 山の中を行く。
 
 「キャピトル・リミテッド」の日本での紹介のされ方というと、シカゴとワシントンDC結ぶビジネスライクな路線・列車に過ぎない、景色は期待するな……という感じのものが多いような気がします。
 思いっきり異を唱えたいですね!! そりゃ確かにアメリカといってイメージされるようなワイルドな眺めはありませんが、そのかわりに優しい景色が間近に迫る別の魅力があるのですから。

 このルートに、かつて「東部ではほぼ唯一」のドームカーが運用されていた意味は大きいと。景色が売り物になるからこその「展望車」だったのですし。
posted by 西方快車 at 22:08| Comment(0) | 2009 北米 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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