ここに気になるのはアメリカ……アムトラックの鉄道運賃です。
当日購入の運賃だと、このロスアンゼルス→シアトルの西海岸縦断で192ドル(18000円位)。所要34時間30分。2216km。
(2216kmの運賃は、JR本州会社だと21110円)
また、シアトル→シカゴ→ワシントンDCでの北部大陸横断で310ドル(29000円位)。所要65時間と30分(うちシカゴでの乗継3時間)。4805km。
(4805kmの運賃は、JR本州会社だと40430円)
アムトラックの運賃は公式サイトより、この執筆日2月7日発の運賃を出しました。ちなみに日に依って運賃は変わりますし、購入時期が早いとだいぶ安くなります。2週間前に購入すればロスアンゼルス→シアトルで98ドル、シアトル→ワシントンDCでは193ドルという運賃になります。ほぼ半額から2/3程度。
JRの運賃計算は、以下のサイトを参照しました。
http://bunkatsu.info/fare.html
「運賃の仕組み」より。
当日購入の運賃であってもJRより低廉であることが分かると思います。もちろん、運賃の他に急行料金・特急料金・座席指定料金等は一切不要!
それにしても……2週間前購入の運賃は、日本どころかロシア並じゃないでしょうか(笑)。但しロシアだと最低運賃でも3等寝台(プラッツカルト)になります。昼の居住性を重視したアメリカ式デイナイトコーチと、昼は直角椅子ながら夜は横になれるロシア式プラッツカルトのどちらが快適かは難しい問題ですが、この辺の考察は別の話題にでも。
とにかく、豪華な設備に対して運賃は低廉に抑えられていることは事実です。
とはいえ、アメリカにはバスや格安航空という強力なライバルがあるのも、また事実ですが。
例えばグレイハウンドでロスアンゼルス→シアトルの当日運賃検索すると正規158ドル、web割引120ドル! ……ただし2週間先の事前割引でも96ドルまでしか安くなりませんので、ここではアムトラックと同等。
勿論、設備が大きく違うことも考えに含めるべきですよ!
グレイハウンドの設備に関しては、先に結論だけ上げておけば
「最低。日本のツアーバス並か以下!」
とだけ記しておきます。「はかた号」はいうに及ばず、青春ドリーム(JRバス関東)のエアロキングさえも恋しくなりましたから(苦笑)。
やはりアムトラックの運賃は割安というべきでしょう。
さて。
その豪華普通車を含む「編成」はどんなものでしょうか?
「コースト・スターライト」はこんな感じ。
機関車の三重連に続き……。
荷物車−従業員用寝台車−寝台車−寝台車−展望車(寝台客用)−食堂車−展望車(座席客用)−座席車−座席車−座席車
……という10両編成。その中で乗客乗せる車は僅かに5両!! 残り半分が何らかのサービス用車両(荷物車は旅客の預け荷物を運ぶためのもので、収入になるわけではない)。
こんな編成はアメリカ以外で考えられるでしょうか。しかも特別なツアー列車の類ではなく、運賃を格安航空やバスと争わなければならない「普通の列車」でのことです。
展望車(ラウンジ車)は通常の長距離列車では1両であり、寝台と座席で2両用意したコースト・スターライトは別格ではありましょう。されど、「荷物車」「従業員用寝台車」「食堂車」はどの列車にも必須のものになっています。
アムトラックは全席満席で走っても赤字……という噂がありますけど、ちょっと否定する気になれません。
しかし、アムトラック発足直前の旅客輸送サービスが地に堕ちきっていた頃への反省と自責、また旅客輸送全盛期へのノスタルジー、公社であるが故の理想主義など考えれば、こんな編成も「当然」なのかもしれません。
そもそも、運行距離考えれば「従業員用寝台車」「食堂車」は必須。駅(ホーム)での物販が商売にならない以上、後者の存在意義は限りなく大きなものになります。従業員も多くなりがちで、労働環境考えれば彼ら彼女らの寝台だって必要でしょう(客用の空き設備でどうにかなる人数ではない)。旅客の手荷物も多いのがアメリカですから「荷物車」も居る。最後に売店兼ねた「展望車」が唯一のゼイタク設備かもしれませんが、編成に通常1両のこの種の車がついてる程度なら、他の国の列車でも別に珍しくはありません。
そう考えてみると、豊かなる資本主義国アメリカで旅客鉄道輸送を行う難しさがしれようというものです。
但し、豊かさこそが社会主義的に旅客鉄道輸送を維持させているのも、また事実なのでしょう。
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